ギャンブル依存症で会社をやめた外国人の話
ギャンブル依存症が原因で会社をやめた人を今までに2人、身近に見ています。
2つ目がつい最近発生して、ギャンブル依存症の怖さ、症状の深刻さを痛感したのでそれについて書きたいと思います。
人生に大きく不利益になるにも関わらず、ギャンブルをしたいという衝動が抑えられない精神疾患であるギャンブル依存症。依存症には物質依存、プロセス依存、関係依存などと色んな種類がありますが、ギャンブル依存はこの中のプロセス依存の代表的なものです。ギャンブルをする過程で得られる興奮や刺激を求めて、その行為にのめり込んでしまうのです。 どんなに興奮したりのめり込んでいてもノルアドレナリンが分泌されれば冷静な判断を保つことができますが、ギャンブル依存症患者の場合、このノルアドレナリンの分泌量が少なくなる傾向があり、以下のような行為をしてしまうのはそのせいなのでしょう、
- 財産を使い果たすまで続けてしまったり、
- 仕事をサボってでもやってしまったり、
- 借金を作っても大金が取り戻せることを疑わなかったり。
そして、ギャンブル依存症になりやすい人はだらしない性格なイメージですが意外な傾向として、
- 負けず嫌い
- 完璧主義
- 真面目
な人も挙げられるそうです。
仕事仲間だったインドネシア人のAは、外国人技能実習生たちの指導員の一人として働いていました。
私が管理者として彼の作業管理をしていたのは4年ほど前です。イレギュラーな事象で、異常なほどにタイトなスケジュールで作業をこなさなければならない時もありましたが、そんなときに彼の働きでなんとか仕事を間に合わせることが出来たことが何度もありました。
彼は指示されたことはなんとしてでもやり遂げる責任感を誰よりも強くもっていたんです。
それから時がたち彼が他県の拠点に異動になって私の管理下でなくなってからは彼の仕事ぶりは聞こえてはきませんでしたがもちろん心配はしていませんでした。 他拠点でも責任感を持って誠実に仕事をしているはずだと信じていました。
そして最近になって、彼が日本人の妻と離婚しそのため日本での在留資格を失いインドネシアに帰国するという情報が入ってきました。そして当然会社をやめることになると。
しかし彼のいた拠点の管理者から聞いた話は耳を疑うものでした。
彼はギャンブル依存症に精神をむしばまれ、仕事を抜け出してパチンコをするというのが癖になっていた、というではありませんか。
それだけではありません。
日本での最低賃金で雇用されている技能実習生に金を借りてまでパチンコに行っていたと!
金を借りて、というのは良いように言っていて、金を巻き上げて、という表現の方が正しいでしょう。返していないとのことですから。 さらに実習生が金を渡すのを拒むと彼はその実習生に対してわざときつい作業をさせたり休憩をさせなかったりと、報復の嫌がらせをしたらしいのです。
完全なるパワハラで、しかも脅迫してもとめるのが金だなんて!
こんな調子で実習生に仕事をさせて自分はパチンコに出かけていたとは本当に信じられません。
あの頃の、誰よりも責任感の強く仕事に誠実だった彼が嘘の姿でないことは、一緒に仕事をして彼に助けられた私にははっきりと分かります。
そんな彼は変わってしまったんです。倫理に逸脱していると判断がつかなくなる人間になってしまった。
いや、変わったと考えのは言い過ぎか。ギャンブル依存症が彼に乗っかっているだけで、治療は間に合うはずですから。
離婚の原因の一つもやはりギャンブル依存からの経済圧迫でした。
ギャンブル依存症が人生を壊してしまうのは、人を変えてしまうからなのだと、目の当たりにした経験でした。
もう話す機会がなくなってしまいましたが、ギャンブル依存症から立ち直るまで手を差し伸べるチャンスを会社からもらいたかった。
そのためには実習生たちや他の関係社員に、依存症克服までゆっくりと治療させるからと理解を求める説明をしたり、カウンセリングを受けさせる機会を与えたり、そういう協力ならいくらでもしてあげたかった。
彼には助けられたんだから。
ギャンブル依存症が人生を壊してしまうのは、人を変えてしまうからなのだと、目の当たりにした経験でした。