「地元なら好きな芸人1位になれる説を検証」を検証
水曜日のダウンタウンの企画は本当に興味深いものが多い。
好きな芸人ランキングで、地元に近づけば1位になれる説。
地域タレントはその地域で人気が高い、ということはその映像だけでも見て取れたが、それだけではないように思えた。
回答者心理が純粋でなく、さらにアンケート調査方法の選択により導き出された結果のようにも思えるのだ。
目次
好きな芸人と聞かれて、すぐに思いつく芸人を答えている
これはアンケート調査の罠とも言える。好きな◯◯と聞かれて、好きかどうかを考えずに思いつくものを回答してしまう人が一定数いて、その割合はかなりの物と思われる。
全国での調査ではサンドウィッチマンが圧倒して1位に居座っているが、この1位であることが次のアンケート調査で更に2位を突き放す結果を作る。1位である印象から、アンケートに答える側がすぐに記憶から呼び出すことができ、回答に乗りやすいのである。これが議員選挙でも起こる。野党が与党の座をなかなか奪えないのはこのジレンマによるとも考えられる。
アンケート調査方法による結果の偏向の可能性
また、同番組の調査の様子を見ていると街頭で声を掛けて聞き取っている(演出かも知れないが)。これは脳のキャッシュメモリにある芸人名を言うだけの回答となりやすい。さらにカメラを向けられて答えているので匿名性がないため純粋な回答にはならないかも知れない。しかも田舎での調査であるため視聴者が薄々とアンケートの意図を汲み取ってしまっている可能性もある。同じ人にインターネットで住所を明かさない匿名調査をしたら大きく違う結果になる可能性が充分ある。
と以上のように結果が純粋でない可能性はなくはないが、この検証自体の興味深さは捨てたものではない。
以下のような単純なことを思い出させる。
アンケート回答はそもそもアウトプットである
知っていてもどんなに好きなものでもアンケートで回答さえしなければその手のランキングに影響するわけはない。受けた調査に対してアウトプットしない選択肢だってあるし、状況的に心情的にアウトプット出来ない場合もあるだろう。
どんな知識をアウトプットするのかというと、狭いキャッシュメモリの中からすぐに呼び出せるものを選ぶことになる。
この時に呼び出される芸人名は
- テレビなどでよく目にする芸人
- ランキング上位の芸人
- 普段から応援している純粋に好きな芸人
- 印象深い芸人
といったところで、キャッシュメモリの上位部分に置かれている。印象深い芸人の中にはイレギュラーな事実も含み、例えば同じ大学卒だとか同性同名だとかたまたま見かけたことがあるとかそういうものも含むが、地元が同じや近いという事実は、芸人が巣立った経験がない田舎なほど印象深い。そういった地方の人々のキャッシュメモリの上位にあるはずで、調査に対してアウトプットを選択するに値するだろう。
そこにきて更に、調査における地域という条件だけを固定して他の条件を無作為とした調査は、当然地域がもたらす印象深さの条件だけが強く出るので、地元が近い芸人がランキング上位となるのは当たり前ということになる。
最後に
ランキング結果や検証内容は興味深いのだが、プロセスを考えてみると意外性はない。
とはいえ考え抜いてみる面白さを教えてくれる良い企画である。